サイトハウンドについてまじめに考えるブログ
2006.08.21.Mon スムース・サルーキー 1

サルーキーにはフェザータイプとスムースタイプの2つのバリエーションがある。
フェザータイプは耳・前肢・後肢そして尻尾に飾り毛を持ち、
スムースタイプはこれらの飾り毛がない全くの短毛である。

世の中の多くのサルーキー・オーナー達はこの歴史的に重要な役割を果たすスムースタイプの存在をあまり知ろうとはせず、時には理解しがたいものとされてきた。

スムースタイプは現在ではAKC、KC、そしてFCIのスタンダードにおいて統一的に「(解剖学的)特徴はフェザータイプと同様であるが、飾り毛を持たない」とされている。
勘違いしてはいけないのは、スムースタイプとは遺伝的にフェザータイプとは異なる表現型の一つであり、決して「飾り毛の少ないフェザータイプ」のことではない。
もしも耳の上部半分のみ長めの毛で覆われている場合、それはただ単に「飾り毛の不十分なフェザータイプ」と表現されるのである。
欧米先進国にある「飾り毛は長ければ長いほど美しい典型的なサルーキー像である」という奇妙な先入観のおかげで、原産国周辺では圧倒的にスムースタイプの個体が多いのにもかかわらず、スムースタイプはこれまであまり愛好者を増やす機会がなかったといっても良いだろう。


70年代当時、スムースタイプはその知名度と認識の低さから先進国進出のチャンスを大きく逃した。
オリエンタル系の短毛サイトハウンド種を好む人間はスムースタイプの存在に気が付かず、同時に近縁種であるスルーギーとアザワクの輸入に力を注いだのだった。
その甲斐あって2003年にはスルーギーの累計1230頭、アザワクでは550頭がドイツ・サイトハウンド協会に登録されている。
USAではいまだにスルーギーとアザワクの犬学的な区別論争が治まり切らない事から、これら二つの犬種の繁殖はあまり盛んに行われていない。
しかしフィンランド、スゥエーデン、ノルウェーの北欧諸国では20世紀後半に行われた検疫制度の改正に伴い、これらの新犬種を原産国から導入することに懸念を示し、同じくオリエンタル系のサイトハウンド種として既存のサルーキーの短毛種(スムースタイプ)を選んだ。

       Smooth 1

        CH Zandokhan Sawahin

Serona Kelb、これがイギリスKCにおけるサルーキーのスタンダードの元になった犬の名である。
あまり知られていないことだがSerona Kelbは飾り毛の豊富なブチ模様の父犬とちいさなグリズルカラーのスムースタイプの母犬から生まれた。
このことからだろう、イギリスKCは当初からサルーキーのスムースタイプについてスタンダードの中で言及していた。

Serona Kelbはシリアの生まれである。
しかしサルーキーの原産諸国である中近東からいくらスムースタイプの情報が先進国に流れてきたところで、これらを管理している正式なスタッドブック(繁殖の記録)がこれらの国々にはなかった。
現在先進国の中でスムースタイプはUSAをはじめスカンジナビア諸国、イギリス、オーストラリアで繁殖され、15年ほど前からフランス、チェコ、スイスそしてドイツなどのヨーロッパ諸国でも(再び)その姿を見かけるようになった。

上記で(再び)と書いた理由には、記録によると1929年にすでにドイツに数頭のスムースタイプが原産諸国から輸入されていたという記録があったからだ。
当時スムースタイプであることの表記が統一されていなかったため、確認できるだけで4頭ほどのスムースタイプがいるが、実際にはもっといたであろうと考えられる。
4頭のうち3頭はイランから、もう1頭はバーレーンからの輸入である。
これらのサルーキーたちは特に繁殖に用いられることなく、その記録が途絶えている。

イギリス、スカンジナビア諸国とUSAにおけるスムースタイプの歴史を辿ってゆくと、Sedeki Talataとその母犬Sedeki Mazuri Varahに行き着く。
TalataのブリーダーはDon WiedenというSedeki犬舎の持ち主であり、スムース・サルーキー・ブリードの創始者といっても良いだろう。
1962年に彼は犬舎最初のスムースタイプMazuri Varah(レッド♀)をイギリスの有名犬舎Mazuriから譲り受け、その後彼のブリードしたスムースタイプは世界各国のスムースタイプブリードの基盤となった。
Mazuri犬舎はGwen Angelをオーナーとするイギリス最古のサルーキー・ブリーダーのひとつに数えられ、Don Wieden以前にスムースタイプを飼っていた。
また1920年代当時イギリス軍将校の F. Amherstと旅団総長Lanceによりサルーキーという犬種がイギリスに輸入された際、少なくとも両者のうちどちらかがスムースタイプを連れていたという記録もある。

       Smooth 2

        left: Multi-CH Yazarah Sawahin
right: CH Zandokhan Sawahin


Sedeki Talata、♀、1965年3月18日生まれ、レッド、スムースタイプ。
 父犬: Sedeki Mazuri Badeschah、ブラック&ホワイト・パーティー、フェザータイプ
 母犬: Sedeki Mazuri Varah、スムースタイプ

Badeschahの母方祖父母はいずれもスムースタイプであり、父母ともに1957年にイランの富豪からHenderson家への贈物としてイギリスへ輸入された。

Varahの父方曾祖母はイラン出身であるが、Badeschahの祖父母とは血縁関係にない。

Badeschahの両親はイギリスで初めてのスムースタイプのチャンピオンサルーキーKumasi Kommandanを生み出し、このKumasi Kommandanは当時のコーシングフィールドにおいてもズバ抜けた成績を残し、さらにショーにおいてBOBを手にした。

Sedeki Talataとその母犬Sedeki Mazuri Varah、そしてCH Kumasi Kommandan。
イギリスにおけるスムースタイプの歴史はこの2つのラインから始まった。

(つづく)




Comment











ご無沙汰してます。
短毛の大型サイトハウンドに関心があります。
特にサルーキーを飼っていたこともあり、この次にはスムースサルーキーをと思ってます。
Sedeki犬舎のサイトを覗いてもスムースの画像が出てきませんのでスムースの歴史の有るブリーダーとは気が付きませんでした。
よくサーフするサイトにはMidbar、Dadaelis,Qashani、Ruweis,Al-Shen があります。
つづきを楽しみにしてます。
From. アルフィーのボス 2006/08/24 12:24

アルフィーのボスさん、こちらこそ大変ご無沙汰しております。
その後お元気でいらっしゃいましたか?
恥ずかしながらSedeki犬舎がHP持っているなんて、私存じませんでした。
ボスさんのコメント見て調べてみたら...ありました。(^^;)

ちょうどTopページにある古い写真の中の右端にTalataとVarahが立っています。
写真下のコメントにも「愛犬のペディグリーを見てください、この犬達または同胎犬の名前がどこかに見つかるはずです」ってありますね。

アメリカ系のサルーキー犬舎は数が多すぎるのと画面がなぜかすっきりしないデザイン(笑)なのであまり見て回ることはしていませんが、スムースを扱っている犬舎は意外と多いようです。(Midbarは特に興味深いです)
できれば日本に多く輸出している有名犬舎などは避けて、今後の日本サルーキー界の将来のことを考えてどこか別のラインでお探ししてみてはいかがでしょう?
(と、勝手に私個人の希望をぶつけてしまいますが...)

本文写真のスムースたちのブリーダーSawahin犬舎はドイツのトップブリーダーで、骨格のすばらしさのみならずコーシングなどでも抜群の能力を示し、問答無用に人生すべてをサルーキーに捧げたNo.1です。

そしてこのZandoKahnが当時初めて出たショーリングの上でボダイの隣に並んでおりました...
そりゃ負けるわな。(笑)

では続きをお楽しみに♪
From. Kyoko Alscher 2006/08/24 17:29

こんにちわ
すっごいためになりました!!また来させてください
From. MASA 2006/09/02 21:18

あわわ...MASAさん、ごめんなさいっ!
このサイト毎日見回りしてないもんで、気付くのが遅くなりました!!
というわけで、スムースのお話でした。(^^;)
その2に続きますので、また来てくださいね。
アップしたらBodai Blogでお知らせします。

From. Kyoko Alascher 2006/09/09 06:59