サイトハウンドについてまじめに考えるブログ
2009.08.19.Wed スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています



| | - | - |

2006.04.06.Thu サルーキー向きの人間とは?

サルーキーをどこかで見かけ、その外見や話に惹かれいつしかサルーキーを飼いたいと思い始めた人にはよくよく読んで欲しい。
いろんな考えと思いの末、考えなくてはいけないのは「果たしてサルーキーは万人向きか?」という疑問である。
ドイツのブリーダーたちは口をそろえて「NO!」と答える。

では逆に「サルーキー向きの人間」とはどのようなものか?
犬と人間が満足ゆく関係を持つために、サルーキーは何をしなければならないのか?
そしてサルーキーは何を期待し、どこに落ち着かなければならないのか?

「サルーキー向きの人間とは?」という質問に対するDWZRVのブリーダーアンケート結果を参考に考えてみた。

『時々サルーキーの飼い主でサルーキーの持つ自立心と服従性のなさを問題として抱えている人がいるが、そのようなことを犬に対して絶対条件として掲げるのであればサルーキーは全くの選択ミスである』

サルーキーは本来原産国での歴史的飼育条件から自由を好む犬種であり、
必要運動量も多く、またどんなに広い庭で遊ぶことができてもけっしてそれだけでは満足しないのである。
柵で囲われた庭は所詮「庭」であり、外界と遮断されていることをサルーキーは気付くのだ。

『サルーキーは感情移入できる、敏感な、そして精神的にバランスの取れた人間にのみ譲渡するべきである。サルーキーに対して使役犬のような性質を期待せず、パートナーとして一緒に過ごす時間を純粋に喜びとしている人間が良い。』

サルーキーは飼い主の感情の変化に敏感である。
飼い主にも同じくサルーキーの敏感さに対応した性格が要求されるのだ。
ただ単に幸せ家族の象徴として片手間に犬を飼いたいなら別の犬種を選ぶべきである。

『サルーキーはけっして他犬種のようにしつけが容易な犬種ではない。しかし何人たりともサルーキーの持つ欲求を打ちのめしてはならず、むしろ彼らの誇りと気ままさに敬意を示すべきである。』

かの昔、自尊心の強さを美の評価の一部としてサルーキーは原産国でセレクトされてきた。一方で服従性を示すサルーキーは自己判断で狩をすることができないため必ずしも良しとされなかったのである。アラブ人たちが狩りに必須なこのジャンルの犬(サイトハウンド)を「犬」とせず、「アラーの贈物」として自分達と同じ目線に置き尊重してきた経緯を忘れてはいけない。自尊心のないサルーキーはただの不満を抱えた犬である。
力づくでのしつけ方や彼らの欲求に見合わない報酬には不服を示すのが当然なのだ。

『飼い主として時々サルーキーを自由に走るチャンスを与えるべきである。サイトハウンドの心は走りたがっているということを忘れてはならない。』

彼らは走るために生まれるのである。
彼らの体は早く走るために流線型を描き、走りに邪魔な脂肪を蓄えない代謝系を持ち、そして疾走することにより脳内に満足感が浸透するのである。
そんな彼らの至福の走りに魅了される人間が多いのも当たり前の話であろう。
サルーキーに走るチャンスを与えないということは死よりも辛い獄中での終身刑に値し、明らかな虐待であるということを自覚するべきだ。
サルーキーにとって自由に走るということは何よりも、飼い主から一身に注がれる愛情に匹敵する最高のご褒美であるということを忘れてはいけない。

『サルーキーを飼うことには多大な精通した知識と寛容な心が要求される。』

サルーキーを飼うならそれなりに勉強しろ、ということ。
特に一度でも自分のサルーキーに子供を産ませたいと思っているなら当然のことだろう。
自分の犬を客観的に見ることができなければ繁殖はただの無知による無恥な行為であるから、絶対に手を付けてはならない。

『できるだけ既存のカテゴリーに当てはめるのではなく、個性の存在を認め尊重するべきだ』

巷に出回っている「犬のしつけ本」から手を引いて欲しい。
犬は工業製品ではない。
ましてや犬を自分の手下くらいに思っているなら、サルーキーを選んで欲しくはない、壊れた関係が出来上がるのが目に見えているから。
サルーキーは「呼び戻し」が覚えられないのではなく、「自分の意思を無視して飼い主の勝手気ままに呼び戻されたくない」のだ。

『サルーキー向きの人間とは、サルーキーを愛するがゆえに街の生活を捨てて田舎へと引越し、サルーキー向きの家を購入したり、休暇の予定もサルーキーを最重要考慮要因として立て、ソファをサルーキーのために提供し、そして自分の人生をこの華麗な犬種にささげたいと熱望する人間...ここまで来ればサルーキーを受け入れる絶好のタイミング、毎日彼らのことばかり考えていられる夢のような人生の始まりである。』

原産国で何千年もの間いかにこの犬種が大事に飼われてきたか想像して欲しい。
それはけっして人間の感覚で「大事=甘やかし」てきたのではなく、あくまでもサルーキーの持つ性質を尊重し「共生」してきたのである。
サルーキーをはじめとする「犬」たちは本来持つ性質にあった生活状況を得る権利があるとドイツの動物保護法は認めているように、人間の一方的な条件下で生きることを強要してはいけない。

サルーキーと飼い主との良い関係はすべて飼い主次第である。
今の自分が置かれている状況や自分の性格をしっかり判断することが犬種選択の第一歩、サルーキーの寿命は12年以上といわれるから無理をしていては到底持続しないのがオチである。
どこかに無理が生じると感じた時点でサルーキーをあきらめる気持ちもまたサルーキーを愛するがゆえであることを忘れてはいけない。

そしてすでにサルーキーと一緒に暮らしているならば、どうか彼らの幸せのために努力を惜しまないで欲しい。


| 22:01 | comments(14) | Saluki |

2006.04.27.Thu 数字でみる世界のサルーキー

今回はサルーキー頭数を世界各国で比較してみた。

頭数はあくまでも各国のサルーキーを管理している家庭犬協会に登録されたものだけを対象にしており、その国で生まれた仔犬の頭数と輸入により新規登録された頭数を合わせたものである。

各国の家庭犬協会とは
 日本:ジャパン・ケンネル・クラブ(JKC)
 アメリカ:アメリカン・ケンネル・クラブ(AKC)
 イギリス:ザ・ケンネル・クラブ(KC)
 ドイツ:ドイツ・サイトハウンド・ブリード&レース協会(DWZRV)
 フィンランド:フィニッシュ・サルーキー・クラブ(FSC)
で、それぞれサルーキーの血統書管理を行っている機関である。

99年から2005年までの7年間の登録数は以下の通り。
Salukizahl der Welt
この統計で一目瞭然なのは日本のサルーキー登録数がこの6年間で2倍以上に増えていること。
もちろんこの統計に表れない無登録の繁殖だってあるだろう。
しかし全犬種の合計登録数が同じ6年間でわずか30%の伸びであると言うのに、サルーキーは2倍以上に増えているのだ。

この統計がいったいどういった意味を示すか、よく考えて欲しい。

日本以外の上記4カ国ではサルーキーの繁殖に関する条件がクラブで定められており、登録数(おもに繁殖による)の著しい増加は見られない。

日本のこの急激な登録数の増加は一概に繁殖に関する条件の定められていない現状にペットブームが伴い、素人または業者繁殖によるものと言っても良いのではないか?

さて、狭い島国で繁殖される大量のサルーキーだから、ここまでくると貧しい遺伝子プールが懸念される。
日本へのサルーキーの輸出に関してデータを見ると、サルーキーを1900年代に原産国から初めてヨーロッパへ導いたイギリスは少なくとも過去10年間において日本へのサルーキーの輸出は行っていない。
ドイツからも当然日本へのサルーキーの輸出など一度もない。
フィンランドの統計はまだ目にしていないのでなんともいえないが、ましてや原産国からのサルーキーの輸入など遠い夢話くらいにも思われているかもしれない。

おそらく日本が「海外からの血」として受け入れているのはアメリカからであると思われるが、アメリカのサルーキーを唯一の繁殖交流相手として選ぶだけではサルーキー本来の健康さは保てない。
というのもアメリカではすでにサルーキー乱繁殖の兆候が出始めているからだ。
今のままの状態を改善しなければ、日本のサルーキーの将来に不安が募るばかりである。


| 00:33 | comments(13) | Saluki |

2006.06.12.Mon 原産国のサルーキー

いろんな犬図鑑にサルーキーの原産国はエジプトだの、サウジアラビアだの、イランだのといろいろなことが書かれているが、果たしてどこが本当の原産国なのだろうか?と頭をひねる人がいるかもしれない。

実際にはこれらの国はすべて原産国である。

サルーキーの歴史はとても古く5千年とも7千年とも言われ、
狼からかなり早い時期に分離した犬はサルーキーとして独自の発展を見せた。
東はカザフスタンから西はモロッコまで、アラブ諸国全土でこの犬は飼われ、
そして持ち前の視力の良さと俊足と持久力で家族の食卓を支えた。

アラブ人にとってこの犬は生きてゆく上で欠かせない狩猟のための武器であり、
そしてその静かさからそのほかのけたたましい犬とは一線を引き、アラブ人はサルーキーを犬ではなく
「アラーの神からの贈物」と称し、家長の隣で寝起きすることを許した。
(一方では家長は家族のものの中で特に女性に関しては必ずしも信用をおいてなかったともいえ、またいつの時代もどの国でも狩猟が男性の仕事である事から猟に必要な「道具」としてのサルーキーの管理は家長自らもしくは男家族により行われてきた)
このようにサルーキーはアラブ人の間では「高価なもの」として代々扱われ、決して金でやり取りされる商品などではなく、サルーキーの譲渡は特別な状況下でのみ行われてきた。
たとえば恩人に感謝の気持ちとして、時には貴族に取り入るために最上級の贈物として、サルーキーは家族の女性たちよりも上に位置づけされ「サルーキーを手渡すくらいならば、娘をやったほうがましだ」とまで言われるほどであった。

厳密に言うとアラブ全土では「サルーキー」とは一般に「サイトハウンド」と同じ意味で使われ、必ずしもFCI公認の犬種「サルーキー」と一致するとは限らない。
ある地域ではアフガンハウンドをサルーキーと呼んだり、スルーギーをサルーキーと呼ぶことが一般である。
またこれらの犬種はそれぞれ昔から掛け合わされることもあり、カザフスタンのアフガンハウンド→ステップ型→ショートヘア・アフガン→タイガン→サルーキー→スムース・サルーキー→モロッコのスルーギーというように西から東に向けて犬種の違いは緩やかな変化を見せ、また犬種の特徴は地理的・気候的条件と一致するのである。

これらのことより古代遺跡の中に多く見られるサルーキーの姿は必ずしもサルーキーではなく、当然スルーギーであったりもするのである。

とりあえずここではFCIで言う「サルーキー」について話を進めよう。

サルーキーが砂漠の遊牧民ベドゥイン族にとってなくてはならない存在であったことは周知の事実だが、実際にベドゥイン族の元で見られるサルーキーたちはヨーロッパやアメリカそして日本などで見られるサルーキーとは外見的に少し違っている。
全体的に飾り毛が少なく(またはスムースが多く)、体格も色もとにかくバリエーションに富んでいるのである。

世界的に見るとこれらの原産国からのサルーキーをコンスタントに輸入している国はドイツ以外には見られない事実がある。
ドイツでは輸入サルーキーの合計がこれまでに160頭以上にものぼり、輸入サルーキー第二位のフランスでは17頭でしかない。
ドイツへの輸出国の第一位はイラン、第二位がサウジアラビア、そのあとトルコ、イラクと続いている。(注釈:ドイツには原産国からの輸入サルーキーを多く手がけているイラン人のブリーダーがいる)
その他の欧米諸国ではどうしているかというと、原産国からドイツに輸入されたサルーキーの子や孫を輸入しており、先進諸国同士でまた血の交換を行っているのだ。
このような現象が起こる背景には、サルーキーの評価が原産国で異なっていることがある。

原産国でのサルーキーは基本的に狩猟のための「道具」であるから、当然犬の持つ能力が問われる。
足が速く、長時間獲物を追いかけることができる強靭な体力を持ち、熱い砂漠の上や険しい道を長い時間走っても傷まないパッドそして獲物を瞬時に発見できる視力、獲物をあきらめることなく最後まで追い詰める狩りへの情熱、病気を知らない健康な体とメスの場合は多産であること、これらを持ち合わせたサルーキーは原産国で「最も美しい」と称され、ほぼ強制的に外見上も美しいといわれざるを得ないのである。

言い換えれば先進国にあるような犬種の外見上のスタンダードというものはここでは全く意味を持たず、飾り毛が少なかろうが尾の先が巻いていようが、毛色がブルーであろうが、その犬の持つ能力こそが第一なのである。
こういった経緯があって前述したようなバリエーションがこれら原産国には存在するのである。
しかしこの歴史的なバリエーションは先進国の犬種スタンダードに必ずしも一致するとは言えず、ドッグショーで評価させるのは難しい。

犬種の歴史あってこそのスタンダードであるはずが、1920年代にほんの数頭サンプルとしてヨーロッパに連れてこられた最初のサルーキーの外見を参考にしたがためにスタンダードは全体を見ずして出来上がってしまった。
それから後何度か改正されるものの先進国のサルーキーは原産国のサルーキーとは全く別のものになり、はっきりいうと本末転倒なのである。

先進国の言い分は「先進国の生活体系にあったサルーキーのブリード」で、「都市型の生活には狩りへの情熱はいらない」という。

多くの先進国ではドッグショーの成績(外見上の美しさ)重視によるあまり犬の本質と健康性を見抜きづらく、将来的に大変危険である。
先進国のドッグショーで成績を得づらい原産国出身のサルーキーはドイツでは主にレースやコーシングで活躍しており、これらの能力を持って繁殖許可を得ることができるようになっている。
先進国のサルーキーの将来を考えれば原産国からの輸入は必須であり、繁殖への評価として当然であるとドイツは考える。

ドッグショーといえば先日面白い話を耳にした。
今年アラブ首長国連邦のドゥバイでドッグショーが行われたが、サルーキーの出頭数は原産国にもかかわらずたったの3頭。
見た目に先進国と変わりないこの3頭、それもそのはずオーナーがすべてヨーロッパ人であった。
そしてそのサルーキーたちのリングサイドにはたくさんのサルーキー連れアラブ人が観戦をしていた。
アラブ人たちは自分のサルーキーをショーに出したりはしない。
ショーというものに何の意味合いをも見出さないからだ。
しかしアラブ人は好奇心旺盛な人種なのである。

彼らはお互い知り合うときに「お前のサルーキーを見せろ。そしたらお前がどんな奴か言ってやるよ」と言う。
アラブ人にとってサルーキーとは切っても切り離せない自分の一部なのである。

余談だがサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)では国を挙げてサルーキーの保存に取り掛かっている。
これらの国にとって国犬ともいえるこの犬種、日本ならば特別天然記念物とでも言うところだろう。

またUAEの首都アブダビの近くにはアラビアン・サルーキー・センターというサルーキーの繁殖場がある。
これを運営するHamad Al-Ghanem氏は4世代にわたりアラブ馬とサルーキーのブリーディングを手がける家族の中で育った。
サルーキーとともに育ち、サルーキーを知り尽くしたこの人間は、資本主義に揺れ動き変化してゆく世の中でサルーキーの将来を懸念し、家業に国のバックアップを受けてセンターを創った。
ここでは年間40頭程のサルーキーが生まれ、そしてトレーニングを受け国内だけでなく先進国へも譲渡されている。
もちろんここでは伝統にのっとりお手軽なドッグフードなどというものは与えておらず、専用のキッチンには過去国内の5つ星ホテルのレストランで働いていたという調理人がサルーキーの食事を作っている。

昔からここでは「サルーキーの食わないものは人間も食わないほうが良い」というそうだから、
アラブ人にしてみれば当然なのかもしれない。

センターのHPでは数々のサルーキーが自然のまま映し出されている。
この光景はきっと何千年前も変わらないのだろう。
ここでは時間がゆっくり過ぎてゆくのである。


| 20:08 | comments(4) | Saluki |

2006.08.21.Mon スムース・サルーキー 1

サルーキーにはフェザータイプとスムースタイプの2つのバリエーションがある。
フェザータイプは耳・前肢・後肢そして尻尾に飾り毛を持ち、
スムースタイプはこれらの飾り毛がない全くの短毛である。

世の中の多くのサルーキー・オーナー達はこの歴史的に重要な役割を果たすスムースタイプの存在をあまり知ろうとはせず、時には理解しがたいものとされてきた。

スムースタイプは現在ではAKC、KC、そしてFCIのスタンダードにおいて統一的に「(解剖学的)特徴はフェザータイプと同様であるが、飾り毛を持たない」とされている。
勘違いしてはいけないのは、スムースタイプとは遺伝的にフェザータイプとは異なる表現型の一つであり、決して「飾り毛の少ないフェザータイプ」のことではない。
もしも耳の上部半分のみ長めの毛で覆われている場合、それはただ単に「飾り毛の不十分なフェザータイプ」と表現されるのである。
欧米先進国にある「飾り毛は長ければ長いほど美しい典型的なサルーキー像である」という奇妙な先入観のおかげで、スムースタイプはこれまであまり愛好者を増やす機会がなかったといっても良いだろう。


70年代当時、スムースタイプはその知名度と認識の低さから先進国進出のチャンスを大きく逃した。
オリエンタル系の短毛サイトハウンド種を好む人間はスムースタイプの存在に気が付かず、同時に近縁種であるスルーギーとアザワクの輸入に力を注いだのだった。
その甲斐あって2003年にはスルーギーの累計1230頭、アザワクでは550頭がドイツ・サイトハウンド協会に登録されている。
USAではいまだにスルーギーとアザワクの犬学的な区別論争が治まり切らない事から、これら二つの犬種の繁殖はあまり盛んに行われていない。
しかしフィンランド、スゥエーデン、ノルウェーの北欧諸国では20世紀後半に行われた検疫制度の改正に伴い、これらの新犬種を原産国から導入することに懸念を示し、同じくオリエンタル系のサイトハウンド種として既存のサルーキーの短毛種(スムースタイプ)を選んだ。

       Smooth 1

        CH Zandokhan Sawahin

Serona Kelb、これがイギリスKCにおけるサルーキーのスタンダードの元になった犬の名である。
あまり知られていないことだがSerona Kelbは飾り毛の豊富なブチ模様の父犬とちいさなグリズルカラーのスムースタイプの母犬から生まれた。
このことからだろう、イギリスKCは当初からサルーキーのスムースタイプについてスタンダードの中で言及していた。

Serona Kelbはシリアの生まれである。
しかしサルーキーの原産諸国である中近東からいくらスムースタイプの情報が先進国に流れてきたところで、これらを管理している正式なブリードブック(繁殖の記録)がこれらの国々にはなかった。
現在先進国の中でスムースタイプはUSAをはじめスカンジナビア諸国、イギリス、オーストラリアで繁殖され、15年ほど前からフランス、チェコ、スイスそしてドイツなどのヨーロッパ諸国でも(再び)その姿を見かけるようになった。

上記で(再び)と書いた理由には、記録によると1929年にすでにドイツに数頭のスムースタイプが原産諸国から輸入されていたという記録があったからだ。
当時スムースタイプであることの表記が統一されていなかったため、確認できるだけで4頭ほどのスムースタイプがいるが、実際にはもっといたであろうと考えられる。
4頭のうち3頭はイランから、もう1頭はバーレーンからの輸入である。
これらのサルーキーたちは特に繁殖に用いられることなく、その記録が途絶えている。

イギリス、スカンジナビア諸国とUSAにおけるスムースタイプの歴史を辿ってゆくと、Sedeki Talataとその母犬Sedeki Mazuri Varahに行き着く。
TalataのブリーダーはDon WiedenというSedeki犬舎の持ち主であり、スムース・サルーキー・ブリードの創始者といっても良いだろう。
1962年に彼は犬舎最初のスムースタイプMazuri Varah(レッド♀)をイギリスの有名犬舎Mazuriから譲り受け、その後彼のブリードしたスムースタイプは世界各国のスムースタイプブリードの基盤となった。
Mazuri犬舎はGwen Angelをオーナーとするイギリス最古のサルーキー・ブリーダーのひとつに数えられ、Don Wieden以前にスムースタイプを飼っていた。
また1920年代当時イギリス軍将校の F. Amherstと旅団総長Lanceによりサルーキーという犬種がイギリスに輸入された際、少なくとも両者のうちどちらかがスムースタイプを連れていたという記録もある。

       Smooth 2

        left: Multi-CH Yazarah Sawahin
right: CH Zandokhan Sawahin


Sedeki Talata、♀、1965年3月18日生まれ、レッド、スムースタイプ。
 父犬: Sedeki Mazuri Badeschah、ブラック&ホワイト・パーティー、フェザータイプ
 母犬: Sedeki Mazuri Varah、スムースタイプ

Badeschahの母方祖父母はいずれもスムースタイプであり、父母ともに1957年にイランの富豪からHenderson家への贈物としてイギリスへ輸入された。

Varahの父方曾祖母はイラン出身であるが、Badeschahの祖父母とは血縁関係にない。

Badeschahの両親はイギリスで初めてのスムースタイプのチャンピオンサルーキーKumasi Kommandanを生み出し、このKumasi Kommandanは当時のコーシングフィールドにおいてもズバ抜けた成績を残し、さらにショーにおいてBOBを手にした。

Sedeki Talataとその母犬Sedeki Mazuri Varah、そしてCH Kumasi Kommandan。
イギリスにおけるスムースタイプの歴史はこの2つのラインから始まった。

(つづく)



2006.10.11.Wed スムース・サルーキー 2

アメリカでのスムース・サルーキーの歴史は40年代にまでさかのぼる。
40年代の終わりに二頭の母子スムース・サルーキーがチャンピオンになっており、母犬Lady Yeled Sarona Ramullah はアラブのイブン・サウド王からイギリスの元帥ヘンリー・M・ウィルソン候に贈られたシリアの砂漠地帯で生まれたサルーキーであった。

その後再びスムース・サルーキーへの関心が起こるまで実に四半世紀が費やされ、70年代に入ってSedeki Talataの仔であるSedeki DunishkとGhaza(ハワイで最初のスムース・サルーキー)、そしてTalataの最初の仔でスウェーデンに渡り北欧スムース・サルーキーの基盤となったSedeki Taniの仔Azadi ZanabdeがアメリカのSrinagar犬舎に入りアメリカのスムース・サルーキー・ブリードに多大なる影響を与えた。

一方、オーストラリアでのスムース・サルーキーの歴史は73年にNishapur犬舎がイギリスのMazuri犬舎から譲り受けたオスのMazuri Mejim of SedekiとメスのSedeki Esteから始まった。
その後アメリカ・カナダを経てTalataの子孫が輸入され、オーストラリア生まれのスムース・サルーキーチャンピオンとしてBaghdad Desert Dreamerとその異父兄弟であるBaghdad Desert Descendantが生み出された。

さて、ドイツのスムース・サルーキーの歴史は80年代後半になってSawahin犬舎がアメリカから輸入したZahra Du Zada of Conamorに始まり、この犬の持つずば抜けた成績にこれまでスムース・サルーキーに不慣れであったドイツのサルーキー社会は度肝を抜かれ、そしてようやくスムースタイプを好んで受け入れるようになった。
88年にこのZaharaからドイツ最初のスムース・サルーキー・ブリードが始まって以来、途中でポーランド在住のイギリス人ブリーダーの元から血統であるMuluki Faroukが加わり、これまでに約100頭近くのスムース・サルーキーが国内で生まれているが、いずれも片親のみがスムースタイプであり、両親ともにスムースタイプのブリードはいまだ行われていない。
そしてどのスムース・サルーキーもイラクからの血を受け継いでいる。

ショーリングの上でスムースタイプは短毛がゆえにフェザータイプよりも厳しく採点される。
耳の付き方や胸の深さ、足指の長さなどフェザータイプでは飾り毛に隠されているために、スムースタイプでは見た目に少し違った印象を与えがちで、結果としてよりスタンダードに沿って審査が行われる。
もちろんそこにジャッジの経験も加わるため、ジャッジ自身がスムースタイプを見る目が養われていなければならない。

遺伝学的に毛色を決める遺伝子が多く存在する中、毛の質を決める遺伝子はひとつであり、このひとつの遺伝子によりサルーキーがフェザータイプであるか、スムースタイプであるかが決まる。
そしてサルーキにおいてスムースタイプの遺伝子は優性として遺伝するので、たとえ飾り毛の少ないフェザータイプのサルーキーでも「4分の1スムースタイプが現われている」などという中途半端な表現型などではなく、明らかにこの場合フェザータイプのサルーキーである。
飾り毛の長さは毛質を決める遺伝子の他に存在する「飾り毛の長さを決める遺伝子」によって左右され、また毛質の遺伝においては「白または黒(長いか短いか)」どちらかである(=中途半端な長さはない)ということを忘れてはいけない。

このことより、スムースタイプのサルーキーが生まれるためには少なくとも片親がスムースタイプであること、また両親犬が表現型としてスムースタイプであっても遺伝子型としてフェザータイプ(劣性)を持ち合わせる場合、生まれた仔の中にフェザータイプが出てくる可能性があること、そしてスムースタイプを両親として生まれたフェザータイプのサルーキーからはスムースタイプは生まれないことがいえる。

しかし米英さらにフィンランドのスムースタイプ・ブリードの中にはフェザータイプの両親犬から生まれたスムースタイプのサルーキーがいる。
これは一連の遺伝子の突然変異(ミュータント)として例外視され、またこの突然変異性は自然界でもショートヘア・アフガンハウンドなどのように極稀に見られる現象である。
ちなみにこれまでに登録されているドイツ国内五千頭以上のサルーキーブリードの中でも一度も見られたことのない例である。

スムース・サルーキーはフェザータイプに比べ極度に短いシルクのような被毛とそして少し太めの短い被毛を持ち合わせる。
全身を短い被毛で覆われているためにスムースタイプでは快適と感じる温度がフェザータイプよりも少し高い20度以上であり、動かずにジッとしている状況ではすぐに震えだし、春先のオープンエアーでのショーリングなどでは寒さから膝や背中が丸くなり審査にマイナスポイントを与えかねない。

またスムースタイプを繁殖に用いる場合、その存在数の少なさから将来的に受け継がれる犬種としての特徴や血縁に欠点があってはならず、ブリーダーにはフェザータイプ以上の責任がのしかかってくる。
ブリーダーは最低条件として犬の両親犬とその先祖を直接目にすることまたは少なくとも写真や映像で見てその犬の血統と骨格の健全性を確認しなければならず、同じ短毛サイトハウンド犬種のスルーギーやアザワクとは明確に一線を引いた特徴を備えることを忘れてはいけない。
(これはスルーギーとアザワクのブリーディングにもいえることで、それぞれ犬種として骨格の形成が大きく異なるのである)



2007.04.05.Thu mata salamata's Saluki

mata salamata'sは74年よりサルーキーのブリード(と一部アフガンハウンドのブリード)を手がけてきた犬舎である。
犬舎オーナー、ウテ・レンナーツ女史とヤコブ・プリビル氏のサルーキーへのこだわりの姿勢はこの犬舎が生み出してきた数多くのチャンピオンに見られる。
この犬舎出身のサルーキーからは州・国内チャンピオンのみにとどまらず、インターナショナルそしてヨーロッパ、80年代から90年代にかけては数頭の世界チャンピオンが生み出されている。
さらにはオーナー自身FCIのスタンダード作成を手がけ、2003年にドルトムントで行われたワールド・ドッグ・ショーにおいてレンナーツ女史はサルーキーのジャッジを務めたと言うのも当然のことかもしれない。

その歴史の一方でこの犬舎はmata salamata's系と呼ばれる系統をつくりあげ、特にmata salamata's Aga Khan(90年世界CH)と Bell S'MBran J.R. Juvenoir(マルチチャンピオン)の仔mata salamata's Jadaan Khanは父親同様に94年の世界CHのタイトルを獲得した後、国内4回国外3回計7回の交配で40頭の仔を残し血統を広げている。
我が家の愛犬ボダイの4代前と5代前にはこのAga KhanとJuvenoirの名があり、mata salamata's系の血を見た目に濃く受け継ぐボダイは森やドッグショーなどで見知らぬサルーキーオーナーから「mata salamata'sの?」と聞かれるほど典型的なmata salamata's系の顔・体つきをしている。
たしかに片手間で繁殖されたサルーキーたちに比べると体格の均整が取れ、穏やかながらも自信に溢れたバランスの良い顔つきをしているのがmata sala mata'sの特徴であると感じる。

          Shahrayar Bodai

mata salamata's自体はホームページを持たないが、ドイツ国内外にこの犬舎の血は多く交流しているためネットを通してボダイの親戚従弟達の姿がいろんな国で見られるのはとても興味深い。
犬の繁殖・血統管理がシステムとして確立されているからこそ、それは可能なのである。

                     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

AKC, KC、FCIのサルーキー・スタンダードを比較考察したサイトハウンド協会会報誌の記事でレンナーツ女史はスタンダードを手がける立場としてAKCの「色のバリエーション」の許容の狭さを指摘し、またどのスタンダードも「鼻の色」が黒またはレバー色であるべきでいわゆるバタフライ・ノーズ(鼻の真ん中がレバー色、両脇が黒の二色に分かれている鼻)はスタンダード外であるという。

彼女の主張とは「サルーキーのスタンダードはその犬種の歴史を重視するべきで、スタンダードを元にブリードされるのではなく、サルーキーの本来の姿に基づいてスタンダードが作られるべきである」というものであり、私自身全くの同感である。
サルーキーやスルーギー、アザワクのように歴史の古い犬種にとって1900年代に入って原産国より輸入されたたった数頭のサンプルを見て作られたスタンダードはあまりにも視野が狭く、本来原産国に存在する犬種のバリエーションをカバーしきれていないのが多くの場合であり、その犬種の歴史に敬意と配慮をもたらさなければ全く持って本末転倒である。
こういった経緯からAKCの古びたスタンダードは見直されるべきと女史は言う。

またヨーロッパのドッグショー界ではオーナーハンドラーが当たり前のため、ジャッジはハンドリングのテクニックよりも犬を見る。
そしてジャッジ自体も多くの場合ブリーダーなのが普通である。
自分でサルーキーを手がけ、サルーキーを知り尽くした者たちだけが作る独特の世界であるともいえるだろう。

レンナーツ女史がこの度サルーキークラブ展のジャッジを通して日本のサルーキーと対面し、どのような印象を受けたかいずれ機会があれば尋ねてみたい。



2007.06.14.Thu サルーキーの健康と疾患について 1

近頃日本でも「サイトハウンドはヘマトクリット値が高い」と言うことが徐々に知られてきたが、
果たしてサイトハウンドはヘマトクリット値だけが高いのだろうか?

一般に言う犬の血液検査の正常値とはあくまでも多くの犬種の検査値をより集めおおよその平均値を取ったものであり、これらが必ずしも歴史が長くかつ希少犬種のサイトハウンド達に当てはまるとは限らない。

犬種としてのサルーキーに傾向的に見られる疾患と診断の際の生理的正常値について調査を続けているアメリカの非営利団体「SALUKI HEALTH RESEACH」がある。
この団体はサルーキーを愛する獣医師達により構成されており、犬の専門家としてそしてサルーキーを知るものとして健全なサルーキーのブリードを目指しとても深い見解を示している。

また団体代表のMaryDeeSist博士は「飼い主自身がサルーキーの健康について知り、サルーキーを知らない獣医師に自ら知らせる必要がある」という。

この団体では現在サルーキーのアメリカ国内での血液検査正常値についての調査を継続して行っているが、論文としての発表を控えているためネット上での公開は行っていないかわりに、個人的に興味のある方のために問い合わせに応じるサービスを行っている。

参考までに以下に我が愛犬ボダイの今年の血液検査の結果を一般の犬の正常値と比較したものを公開する。

■ 名前: Shahrayar Bo'dai
■ 生年月日: 2001年2月18日  出生地: ドイツ
■ 性別: ♂
■ 血液検査: 2007年4月
           犬一般正常値      Bo'dai
 WBC G/l      6 - 12        5,5   L
 RBC T/l     5,5 - 8,5        9,52   H
 HGB g/l     132 - 190       207   H
 HCT %       40 - 55        62,7   H
 MCV fl       60 - 77        66
 MCH pg      21- 27        21,8
 MCHC %      32 - 36        33,1
 PLT G/l      150 - 500      225
 Stab %      0 - 4          16   H
 Seg %       55 - 75        60
 Lym %       13 - 30        18
 Eos %        0 - 6         4
 Mono %       0 - 4         2

この結果を見て他犬種では「低白血球症」だとか、「高赤血球症」だとか、はたまた「高ヘモグロビン血症」だとか診断されるだろう。
しかし、サルーキーではこれらすべて正常なのである。
また血小板数もサルーキーでは少なめであり、全体的に血液検査診断要素のほとんどで他犬種とは異なる特徴を見せる。

さらに団体の調査によると現在アメリカのサルーキーによく見られる疾患として遺伝性または癌からの転移による心疾患や悪性血管内皮腫(=血管肉腫、診断時疾患率3割の可能性!!)が挙げられており、これまでよく言われてきた「遺伝疾患がない犬種」だとか「丈夫な犬種」などと言う話はもうあてはまらないことを示している。

一方でサルーキーの血液検査結果の特徴を知らない獣医師により間違った診断が繰り返されていることも指摘されている。
この間違った診断の代表として「甲状腺機能低下症」がある。

甲状腺機能の診断の際には数種類の甲状腺ホルモンを測定するが、団体の調べでは最も重要な診断要因であるT4がサルーキーでは他犬種よりも低い値を示すのが特徴だそうで、この事実は原産国のサルーキー(デザート・タイプ)でも同じ傾向を示すため、まさに犬種全体の特徴といえる。

しかしこれを知らない獣医師では「T4の低下=甲状腺機能低下症」と診断し、飼い主に治療を薦めることが多い。
(少し考えれば気が付くことなのだが、甲状腺機能低下症は発症するまでの時間が長く、また発症後は体の代謝機能低下のため犬の体は肥満傾向を示し、脱毛や倦怠感などもあわせて観察されるはずなのだ。)
間違った診断の結果、間違って治療をされ、投与された薬の効果によってかえって本当に病気になってしまうケースも少なくない。

最後に別の団体の見解では多くの犬種で遺伝病として問題になっている進行性網膜萎縮症もこの先サルーキーで問題として上がってくるとされていることを付け加えておく。

これらの遺伝病を防ぐ手はただ一つ、モラルと正しい知識による良識的なブリーディングあるのみである。



2007.06.20.Wed サルーキーの健康と疾患について 2

2004年にドイツ・サイトハウンド・ブリード・アンド・レース協会が会員であるドイツ国内のサルーキー・ブリーダーと飼い主に向けて行ったアンケートがある。
アンケート内容はサルーキーの飼われ方や食餌の内容、運動のさせ方、躾の方法といった一般的なもののほか、特に興味深かったのはこれまで飼ったサルーキーの死因と既往疾患についてであった。

このアンケートによると52件の回答の死因の第一位は事故(7件:うち1件猟師による射殺)、第二位に癌(6件:卵巣癌、乳癌、腰椎癌、扁桃腺癌など)、第三位が心不全(5件:うち2件ほど突然の心臓停止)となっている。
以下、自己免疫病や血行不良(高齢犬)、腎疾患(若い犬)、肝炎が単発で発症、さらに2件ほど麻酔により死亡している。

既往疾患でも第一位は事故による傷害(4件)、続いて第二位が心疾患(3件)、以下アレルギー、呼吸器疾患、甲状腺機能低下症、肝・腎疾患、麻酔の後遺症、糖尿病、子宮膿炎が1−2件づつ報告されている。

このアンケートはあくまでも会員に向けて行われたものだから、会員以外のサルーキーではまた少し違って上位三疾患が入れ替わるかもしれない。
それにしても走っているときには周りのものが目に入らないサルーキーだから、事故ばかりは飼い主の側が充分注意したいものだ。



2007.12.14.Fri プロジェクト 「サルーキーの血液検査値統計」

このところサルーキー好きにとって不安な話題が続いた。

しかし本当に不安なのは心疾患や遺伝疾患などの重度の疾患だけではない。
愛犬の日常でのほんの少しの変化にも敏感な飼い主達はその都度動物病院に駆け込み、愛犬の変化の状況を専門家に委ねるのだがそこにもひとつ疑問はあった。
はたして専門家である獣医師がどこまでサルーキーの正常を診て取れるか、である。

最近でこそイタグレやウィペット、ボルゾイにアフガンそしてサルーキーと全国的に頭数を増やしてきたサイトハウンドだが、頭数の増加に反して臨床的データや報告が少なくサイトハウンド経験の少ない現場の臨床獣医は診断を迷ってしまうことがある。
現場の臨床獣医に迷われてはせっかくの診断も意味がなく、ひいては間違った診断のお陰で無意味なだけでなく余計な治療まで導入されては患畜の方はたまったものではない。

そこでこのHound of the Windの読者を通じてまずは健康診断において重要な位置を占める血液検査の正常値についての統計を行うことにした。
他犬種に関心がある方々には申し訳ないがまずはサルーキーに犬種を絞って行うことに。
前記事ですでにアメリカの団体がサルーキーの血液検査正常値について調査をしていると報告したが、アメリカと日本では飼育条件も違うため改めてこの場で日本のサルーキーについて把握しておきたいと思った。
さらには統計結果をアメリカのものと比べてみるのも興味深い。

できるだけ多くのサルーキーの血液検査結果が集まるよう読者の皆さんに深くご協力のほどをお願いするとともに、ご協力いただいた方には当然ながら統計結果をメールにてお知らせし、ご愛犬の健康診断の指標にご利用いただければと考える。
どうぞご近所・お友達にもお声をかけ、できるだけ多くのデータが集まるようにお願い申し上げたい。
(なお血液検査に使用する機器の条件などが異なるため、統計結果は論文発表の対象にはならないことをあらかじめご理解願います)

                 ・・・・・・・・・・・・・・・・

データの新旧に関わらず、ご協力いただける方は以下の項目についてご記入の上kyokoalscherあっとlive.deまでお寄せ願います。
(記入間違いを防ぐためこれより下をコピー&ペーストにてメールにご記入ください)

■ 生年月日・性別: 
■ 血統書名(任意):
■ 食餌内容: 
■ 既往歴: 
■ 血液検査日: 
■ 検査項目と結果

・ 赤血球数(RBC)T/l
・ ヘマトクリット値(Hct)%
・ ヘモグロビン濃度(HGB) g/dl
・ MVC fl
・ MCHC g/dl
・ MCH pg
・ 白血球数(WBC)G/l
・ 血小板数(PLT)G/l

・ ALT IU/l
・ GLDH IU/l
・ 総ビリルビン量 mg/dl
・ 尿素(BUN)mg/dl

■ その他・備考


<ご記入上の注意事項>
・ 年齢・性別などは分類の際に重要な振り分けとなりますので、一般項目についてはできるだけ漏れなく
  ご記入ください。
・ 数頭分の検査結果をお寄せくださる場合には、上記項目を1頭毎にコピー&ペーストしてご記入
  ください。
・ 検査結果の単位が上記と異なる場合にはお手元にある検査結果表に明記してある単位を数値の後に
  記入してください。
・ 現在治療中の怪我や疾患については備考欄にご記入ください。
・ ご不明な点はコメント投稿欄ご利用または上記メールアドレスまでご連絡ください。

※ 統計結果はお寄せいただく数にもよりますが、遅くとも2008年3月には一度結果を出す予定です。
  データの送付に締め切りはありませんので、いつでもお寄せください。
※ お寄せいただいたデータのうち個人情報に関わる部分(血統書名・既往歴など)については公開されま
  せん。

  このプロジェクトの責任管理はすべてKyoko Alscherの手により行われます。



<後日追記>
※ このプロジェクトは現在一時お休みさせていただいています。





2008.02.11.Mon Shahrayar犬舎 その1

2007年11月末にボダイの妹ベンガラ(血統書名 Shahrayar Bengala)が初めての出産をした。
D-Litter、つまり犬舎にとって4回目の出産である。

  ※ ドイツのブリーダーはおもに出産回数をアルファベットで数え、生まれた個体はその回数に当たる
    アルファベットを頭文字に名づけられる。
    例:Bo'dai → B=2回目の出産


それを期にShahrayar犬舎はかねてより準備を進めていた犬舎を紹介するホームページを公開し、
そこに犬舎の持つサルーキーへの思い、ブリードのモットーなどを掲載しているのだが、これらはとても
共感する部分が多いだけでなくサルーキーという犬種の繁殖において忘れてはならない大事な思想が
ふくまれているのでここに紹介することにした。

                        ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<ブリードの目指すもの>
私達が目指すもの、それは「ゆるぎない健康」「高い能力」「容姿の美しさ」という3つの響き。
そしてこららは常にこの順位で重視される。

サルーキーはその犬種の特徴として慎重さを持ち合わせながらも人に対して友好的かつ静かな存在で
あるべきで、極端に引っ込み思案だったり怯えがひどいなど神経質で不安定に作用する性格はいかに
その容姿が美しくても私達は繁殖には用いたくない。
私達のサルーキーは人間家族と同じ生活環境で育つことにより日常生活にあるPC・電話・掃除機などの
家電による騒音に慣れ、子供達やその友達と一緒に遊ぶことで社会性を養い、また子供ながらの愛情の
ある雑な遊びの種類をも覚えて育つ。
もちろん周辺環境が性格のすべてを決めるわけではないので遺伝的な要因を選択することが同じくらい
重要となるのである。

私達はできるだけ遠縁のブリードラインを選び新鮮な血を血統に受け入れることに注意を払う。

『犬種の持つ遺伝的バリエーションを保つため、あらゆるタイプの近親交配を避けるだけでなく、
チャンピオン犬同士やいわゆるエリート犬同士でのみのブリードをも避けるべきだと遺伝学者は主張する。
チャンピオン犬同士のみのブリードは遺伝子の多彩性を制限し、例えば限定されたコートカラーのみを
選択的にブリードすることと同じである。
  − 中略 −
これは繁殖に用いる雌犬に限ったことではなく、むしろ多用することにより遺伝子の均一化を加速化
させる雄犬に「スーパードッグ」を用いないことでも避けられることである。』
(ドイツ・サイトハウンド・ブリード・アンド・レース協会会報誌「ウンザレ・ヴィンドフンデ」07年2月号より引用)

この基本に則って私達のサルーキーはブリードされる。
だから私達の最初の台雌「ビントゥ」は3回のみの出産に終わり、この先二度と繁殖に用いることはない。

  ※ Kyoko注: 動物愛護の視点より協会規定による繁殖制限は「雌の繁殖への導引は4回を超えては
    ならず、また最後の出産で満8歳を超えてはならない」とされている。さらには出産間隔についても
    規定あり。


私達は交配相手として候補に上がりそうな雄犬と全国のドッグショー会場巡りにより知り合うだけではなく、
その犬の持つ近縁度も可能な限り低いことを知るため、他の、サルーキーについて同じような意見を持つ
ブリーダーたちとも友情を通して協力し合っている。

(つづく)

           Bengala auf der Ausstellung
                   ベンガラと犬舎オーナーのライヒェルト氏







1/2 >>